序章・探偵と傍観者

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  と、返答などあるはずの無いパソコンから、『ピッ』という機械音が返ってくる。 男は体をビクッと反応させ、再び打ち込まれ始めた文章に目を通した。 『証拠なら ありますよ』 「んなッ……!?」 男は瞬時に室内を見回した。 彼の言葉に対する返答が来たということは、これを打ち込んでいる人間は、彼の言葉が聞こえているということだ。 それほど近くに居るのか、もしくは盗聴機が仕掛けられている可能性がある。 状況から察すれば間違いなく後者なのだが、彼は部屋の隅々まで見渡し、誰もいないことを確認する。 そうしている内にまた『ピッ』という音が響き、男は周囲に警戒しながらも、またパソコンの画面へと視線を移動させた。 『あなたは それを探しに来たんでしょう』 『見付かれば 言い逃れできない証拠となる あるものを』 「……」 男はパソコンの画面を睨み付け、全てを見透かしているであろうその顔も分からぬ何者かを呪った。  
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