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そんな場所に、普通の人間ならば立ち入るわけがない。
無論、“普通”の人間に限っての話だが……。
「アルゥー……。暑いよ……喉カラカラだよー……」
「オレも一緒だっつの……。つーかさっきからまったく景色がかわんねーぞ……? ホントにこっちであってんだろうな……?」
「たぶんあってるよぅー……。うぅ……アルーおんぶー……」
「んぁぁぁっ! 暑い! もたれ掛かってくるんじゃねー……って、しゃーねーなぁ」
ぐぅー。と、奇妙な呻き声をあげながら、相方の体に抱きついた少女。
それを煩わしそうにしながらも、しっかりとおんぶしてやっている青年。
この二人は普通ではなかった。
アルとリオ。金色と桃色の凸凹コンビは、今日も旅路を進んでいた。
灰色の外套を引きずるように、リオを背負ったアルは旅路を進む。項垂れ、茹だり、息も荒々しいその姿は、見るからに辛そうだった。
足取りが重い旅人へ、太陽からの日射しは容赦なく照りつける。それを遮る手だては二人にはなく、アルとリオの額には雨粒のような汗がいくつも浮かんでいた。
常人とはかけ離れた身体を持ったアルでさえ、この過酷な環境に苦痛を感じているのだから、まだ幼い体には、なおさらのこと。リオはアルの背中の上で、苦しそうに呻く。
「噂には聞いてたけど、パルマってこんなに暑いんだねー……」
「少しくらい我慢しろよな」
「リオはアルと違って繊細なんだよぅ……」
「貧弱の間違いだろ。つーか、クルダ村だっけか? あとどんぐらいで着くんだ?」
背中でのぼせてしまっている相方に尋ねながら、アルは先を見据える。
歩いても歩いても、まったく代わり映えしない景色に、アルは焦りを覚えていた。
食糧も水も、残り少なくなっていたのだ。
アルたちが目指しているクルダ村は、パルマにある数少ない村の中で唯一オアシスのある村であり、また、そこにたどり着きさえすれば食糧と水を手に入れることができる。
体力的にも精神的にも限界が近い二人は、一刻も早くクルダ村へと到着したかった。
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