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電話もそうだ。
話すのはいつもわたしばかり。何かないのか訊ねても何もない、という代り映えしない答え。
わたしの話のネタにも限界がある。
わたしが黙ってもなおくんも静かなまま。
なおくんがもともと口数が少ないほうなのは知っている。知ってて好きになったし、付き合っている。
でも、限度ってあるよね。
正直わたしとの電話なんて楽しくないのかなと思うこともしばしば。
さっきまでの浮かれた気分はどこへやら。
考えれば考えた分だけ気分が下がっていく。
たまにわたしなおくんを好きなのかどうかも………。
《ご乗車ありがとうございました。次は?▲。?▲駅です》
あ、降りなきゃ。
幸か不幸かこのアナウンスでわたしの思考回路は強制的に停止した。
さて、改札口は………っと。こっちかな?
人が流れる方に身を任せわたしもついて行く。
「あ………いたいた」
改札口に行くと今日約束をしている子が待っていた。こちらに気付いて手を振ってくれる。わたしも満面の笑みで振り返す。
カードをタッチし難なく出ると残念そうな顔。
「亜美ちゃん、なんで残念そうなのさ」
わたしが話しかけるとちらりとこちらを見て
「引っかかるかなって期待してたのに。衣舞ならやらかしてくれそうだし」
といたずらっ子な笑みを向けてきた。
「残念だったね!そこまでどじじゃないから」
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