83人が本棚に入れています
本棚に追加
先生は、薄くだけど化粧をしてくるようになった。
履いてくるスカートの種類も増えたけど、いまいちしっくりこなかった。
「良く考えたら来年は成人式を迎える歳だし、そろそろ身だしなみに気を使わなくちゃって思ったの」
「そうですか」
指摘されたことが恥ずかしかったのか、まだ化粧に自信がもてないのか。
先生は僕から目を逸らすと拗ねたように唇を尖らせた。
その姿は大人になろうと必死に背伸びをしているように見えて、僕より年上なのに「頑張れ」って言いたくなった。
服も化粧も全然似合ってないけど。
「志望校、ランク上げてみます」
「えっ!ほんと!?うん、広瀬くんならきっと大丈夫!一緒に頑張ろうね!」
先程と打って変わって子供みたいに目をキラキラさせる姿は、僕より子供っぽい。
いつか僕の方が先に大人になる気さえした。
「タイトスカートで自転車漕ぐと筋肉痛になる事が判明したよ」
じゃあ履かなければいいのに。
そんなくだらない話をしながら、今日もいつもの赤い自転車に跨がる。
最初のコメントを投稿しよう!