苦悶のキヲク

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  先生は、薄くだけど化粧をしてくるようになった。 履いてくるスカートの種類も増えたけど、いまいちしっくりこなかった。 「良く考えたら来年は成人式を迎える歳だし、そろそろ身だしなみに気を使わなくちゃって思ったの」 「そうですか」 指摘されたことが恥ずかしかったのか、まだ化粧に自信がもてないのか。 先生は僕から目を逸らすと拗ねたように唇を尖らせた。 その姿は大人になろうと必死に背伸びをしているように見えて、僕より年上なのに「頑張れ」って言いたくなった。 服も化粧も全然似合ってないけど。 「志望校、ランク上げてみます」 「えっ!ほんと!?うん、広瀬くんならきっと大丈夫!一緒に頑張ろうね!」 先程と打って変わって子供みたいに目をキラキラさせる姿は、僕より子供っぽい。 いつか僕の方が先に大人になる気さえした。 「タイトスカートで自転車漕ぐと筋肉痛になる事が判明したよ」 じゃあ履かなければいいのに。 そんなくだらない話をしながら、今日もいつもの赤い自転車に跨がる。  
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