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「おぉ、広瀬」
「……よう」
「お前も待ち合わせかぁ?」
同級生の橋本が浴衣の子を連れて暗闇から現れた。
ここだって暗いのに、何故すぐに僕だとわかったんだろう。
橋本はニヤニヤしながら僕の前に立つ。
女の子もソワソワしながら橋本の隣に並んだ。
祭が嫌いな理由、その一だ。
「…ただの妹の付き添いだよ」
「なんだ、そうか。
あ、コイツ、同じクラスの広瀬」
「はじめましてー」
「…はじめまして」
「じゃあな、広瀬!また明日、学校で」
橋本は女の子だけに僕の紹介をすると、その子の手を取って颯爽と鳥居をくぐっていった。
…ここは人目に付きやすいのか?
僕は溜め息をつきながら重い腰を上げた。
狭い町のお祭りでは、必ず知人に遭遇する。
彼氏、彼女を連れてここに来ることがステータスの小さな町だ。
僕は橋本や橋本の彼女ほど社交性もない。
こんな場で会ったって、苦痛以外の何者でもない。
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