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冬だった。
既に温くなった缶コーヒーに暖を求め、黒と白のボーダーのマフラーに顔を埋めた。
今と同じようにこのブランコに腰掛け、来るはずのない待ち人を願う。
降り出した雪は僕の汚い心が染み込んでいるようで、ちっとも綺麗には見えなかった。
もっともっと降ればいい。
全てを覆い隠すほど積もれば、もう寒さを感じなくなるかもしれない。
分厚い雲に覆われた空を見上げると細かい雪が目に入り、コンタクトレンズと眼球の間に液体となって入り込んできた。
僕は、彼女が望む判断が出来ていたのだろうか。
そんなしょうもない疑問ばかりが思考を埋め尽くす。
僕があの時。
僕があの時。
いや、もうそれを考えるのはやめると心に誓ったはず。
でも、確かにあの時。
…そんな無限のループに陥る。
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