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弟の連絡を受けて母の妹の啓子さんがご主人と病院に駆けつけてきた
「どないなんお姉さん?」
「先生に・・・訊いて・・・」
啓子さんが僕の背中越しに主治医に母の状態の説明を受けている
信じられない
どうしても信じられない
悲しみは弾丸の様に飛んで来るけど
その悲しみに撃ち抜かれてしまえばきっと楽になれるのだろうけど
その悲しみが僕の胸を貫かないのは
自宅に居る祖母の所為だ
勿論加齢の仕業もあるだろう
91歳にもなれば人並みの理性を祖母に求める方に無理がある
我儘であることは責められない
母は祖母の介護に命を奪われようとしている
憎い
本当に憎い
しかし母が
文字通り命を掛けて面倒を見てきた人だ
母が居なくなると云うことは
待ったなしの祖母の生活を僕らが守らねばならないと云うことだ
祖母が自宅で待っている
僕はここで悲しみに貫かれて現実を投げ出す事は許されない
祖母をなんとかしなければと云う思いだけが僕の正気を保っていた
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