消失の美学

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   夕焼けが赤から青に変わる時間帯、その色彩見たさに僕は家を出る。 「おー、明日は満月だよ、兎くん」  兎くんとは僕のこと。少女が勝手につけた、僕の名前だ。隣ではしゃぎながら空を見ている少女を無視しながら、歩幅だけは合わせて歩く。  見た目はひどく若い。病的な青白い肌。赤い大きな目。腰まで届く白い髪を、今は一つに束ねている。  買い出しついでに買ってあげたパンを頬張りながら空を見上げている姿に、僕は恐ろしいほどの神聖を感じるが、彼女には右腕がない。 「ごちそうさま。おいしかった。袋、一つ持つよ」  両手に持った買い物袋のうち、軽い方を少女に渡す。   
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