576人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなに嫌なの?」
「嫌ではありませんけど桃ちゃんと姉さんの場合何かよからぬ事をしてきそうで不安です」
「そっか。私信じて貰えないんだ・・・ごめんね」
悲しそうに笑う桃の顔に罪悪感が溢れてきた。
「ち、違うんです!これはその・・・・・」
軽い気持ちで重いことを言ってた。
その重さに気付いたときには遅かった。
僕は何も言えず下を向く桃ちゃん見つめたままだった。
油断。
「隙有りぃ!」
スルッ━━━━
しっかりと掴んでいた手だが石鹸の泡でするりと抜けられてしまった。
ガバッ━━━━
「わっっ!?」
腹部に飛びつかれたときに気付いた。
罠だったと。
ドンッ━━━
「んふふ、形勢逆転だね」
「泣いてないんですか?」
「あれくらいじゃあ泣かないよ!!私もう高校生だよ?」
年齢になおすとまだ中学生ですけどね。
でも、それなら良かった。
安心した。
「安心してる場合?今ピンチだよ?」
現在、床に倒れる僕に対して腹部辺りで桃ちゃんが馬乗りになっている。
「そうですね。ピンチとはこのことを言いますね」
「余裕そうなのがちょっとムカつく」
「これでも結構焦ってますよ。なんせお互いを隔てる物がタオル二枚って心許ないですから」
「だったらもっと焦ってよ。追いつめてるって感じないじゃん」
「僕は桃ちゃんを信じてるからそこまで焦りません」
桃ちゃんと同じ作戦だ。
相手が油断させておいて形勢逆転を狙う。
「そうだったんだ・・・」
よし、そろそろ・・・
「それじゃあお兄ちゃんの信頼に応えられるようにしっかりと襲う!!」
「・・・・・・」
そうだった。
そう言えばこの子スーパープラス思考だった。
どんなことも幸せのための過程とか自分に与えられた花嫁修業とか都合の良いように変換されるんだ。
全ては・・・時すでに遅しというやつだ。
最初のコメントを投稿しよう!