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早速僕らはお互いの演奏を見ようと、スタジオを探した。しかし、近くにスタジオはないみたいだった。一番近いスタジオは隣の町にあるとタクヤはケータイで調べて教えてくれた。
自転車しか乗れない僕らには遠い距離だった。
結局その日は諦めて、また別の日にしようということになり、まだ講義があったため僕だけはキャンパスまで歩いて戻った。
たいして面白くもない講義を受けた後、何となくすぐに帰りたくない気分だったので、キャンパス内をぐるりと回った。
遅咲きの桜ももう散っていて、どこも緑色と茶色に溢れていた。
テニスコートはこの前降った雨のせいか若干湿っているようで、人が走り回ると簡単に足跡がついた。
朝行ったあのサークルはまだ電気がついていて、くだらない話を続けているのが目に見えた。
何の気なしにその部屋を見ていると、誰かに声をかけられた。
「あの、すみません、軽音サークルってあそこですよね?」
茶髪のショートヘアの女の子だった。
「そうだけど、もしかして入る気?」
彼女は少しもじもじして頷いた。
「バンド組んでみたいなって」
「あそこはとんでもないサークルだよ」
僕は彼女にあのことを説明した。ばからしいものに巻き込まれないように。
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