リコ

4/5
前へ
/40ページ
次へ
早速僕らはお互いの演奏を見ようと、スタジオを探した。しかし、近くにスタジオはないみたいだった。一番近いスタジオは隣の町にあるとタクヤはケータイで調べて教えてくれた。 自転車しか乗れない僕らには遠い距離だった。 結局その日は諦めて、また別の日にしようということになり、まだ講義があったため僕だけはキャンパスまで歩いて戻った。 たいして面白くもない講義を受けた後、何となくすぐに帰りたくない気分だったので、キャンパス内をぐるりと回った。 遅咲きの桜ももう散っていて、どこも緑色と茶色に溢れていた。 テニスコートはこの前降った雨のせいか若干湿っているようで、人が走り回ると簡単に足跡がついた。 朝行ったあのサークルはまだ電気がついていて、くだらない話を続けているのが目に見えた。 何の気なしにその部屋を見ていると、誰かに声をかけられた。 「あの、すみません、軽音サークルってあそこですよね?」 茶髪のショートヘアの女の子だった。 「そうだけど、もしかして入る気?」 彼女は少しもじもじして頷いた。 「バンド組んでみたいなって」 「あそこはとんでもないサークルだよ」 僕は彼女にあのことを説明した。ばからしいものに巻き込まれないように。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加