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「そうなんですか! ありがとうございます」
「いやいや、別にいいよ」
「ってことは、あなたもバンドを組みたいと思って?」
「まあ。……よかったら俺とバンド組まない?」
僕はタクヤのことを話した。すると彼女はやけに派手なリアクションでバンド加入に賛成した。
「私ベース出来るから、これでスリーピース完成だね!」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ明日早速集まろうよ」
「ファミレス?」
「うち」
「うち!?」
どうやら彼女の家はそこそこお金持ちらしく、防音設備のある部屋があるらしい。
「じゃあ明日18時にキャンパス入り口にいてね。そこから案内するから。歩くと少し時間かかるけど」
「自転車で来るよ」
「私自転車ないから歩いてきてほしい」
「そう」
そして、その日の別れ際に彼女は言った。
「絶対バンド成功させようね。スリーピースで」
「三人に拘る必要はあるの?」
「私にはある」
「どうして?」
彼女はその質問には答えず、首を振った。なんでもない、と言いたげに。
「私、リコっていうんだ。よろしくね」
彼女はそう言うと、ヘルメットをかぶり原付に乗ってエンジンをかけた。
僕の自己紹介を聞き終えると、彼女は「また明日ね」と言い、原付を発進させた。
それが僕のリコとの出会いだった。奇跡だった。
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