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「でも、タクヤの言い分だと有名な哲学者や思想家はナンセンスなことばかりを追求したことなるよ」
「ああ、そうだ」タクヤはスティックを片手でくるくると回す。「ある意味ではね」
「ある意味?」
僕は問う。
「そう。それが自己満足のためだったら本当にナンセンスだ。そんなことをしたって人はいずれ死ぬし、人生はどんな立派なことを考えようが一度きり。でも、現代まで語り継がれる思想家たちってのはほとんど自己満足でやってきたわけじゃないんだ。何かのため。たとえば、経済のため。社会規範のため」
「ふうん」
「お前のその思想は誰のため?」
「自分」
「だからナンセンスなんだ」
なるほど、と首をかしげたところでキャンパスの中からリコが現れた。
「ごめんね。待った?」
僕は言う。
「うん。待った」
「そこは嘘でも待ってないていうところだって。隣にいるのがタクヤ君?」
リコはおかしな模様の入ったショルダーバッグをかけ直して、隣のタクヤを指差した。
「どうも。ドラム担当のタクヤです。よろしく」
「よろしく。じゃあ、早速行きましょうか」
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