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翌朝、社内で一人の女性が声をかけてきた。
「田中さん、今日暇ですか?」
ああ、お誘いか…
「悪いんだけど、今夜予定があってね」
「え、そうなんですか。残念…。」
そう言って彼女は、がっかりした表情を浮かべつつ「ではまた今度誘いますね」と言って去っていった。
去り際まで笑顔でいた彼女を見て、ため息をこぼした。
その瞬間、ガシッと肩をつかまれた。
「社内でも評判のヒトミちゃんじゃないか。おいおい、勿体ないな。」
「…高橋か。」
肩をつかんだ男性は高橋と言って学生時代の頃から、かれこれ7、8年の付き合いになる友人だ。社内の情報に詳しく、色々知っている。
「ヒトミちゃんで駄目なら、誰なら良いんだ。あれか、芸能人クラスの美貌の芳沢さんか?それとも…」
「いや、今は誰とも行きたくない。俺は高橋含めて友人と飲みに行く方が、楽しいよ。」
居心地の良い雰囲気といい、異性との空気では出せないものがある。高橋達との飲み会は、自分にとってそういうものなんだ。
それを聞いた高橋は笑顔を浮かべた。そして一言。
「勿体ないな。いや本当に」
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