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「………アルハム。君はまた何をしでかしてくれたんだ」
あの少年の姿をした神は後ろに何処からか現れた人物に“アルハム”と呼ばれ振りかえる
その表情はあの無邪気なものとは全く違う大人びて凛としたものだ
「あぁ、誰かと思ったらギルシュエブか。」
アルハムに“ギルシュエブ"と呼ばれた人物は見た目30代でフレーム抜きの眼鏡をし、銀に近い灰色の髪の長髪を後ろで結んだ男だった
ギルシュエブは小さくため息をつく
「……“私の世界"に存在していた極普通の少年を自分の世界に転生させて…何がしたいのです?アルハム。」
苦悩で少し眉間にしわを寄せるギルシュエブに“しわを寄せるとしわが残っちゃうよ”と冗談混じりにアルハムは言うと澄が落ちた穴のあった場所を見つめた
「ん?別に何かをさせたい訳じゃないさ。ただ…彼が気に入って死ぬのがもったいないからぼくの世界で生きてもらうだけだよ」
「……あなたが本当にそれだけでこんな…世界管理当事者の私だけでなく、他の神からも苦情がきそうな面倒事をするとも思えませんがね。」
少し卑屈臭くギルシュエブが言うとアルハムはまた子供のように無邪気に笑った
「買いかぶりさ。僕は純粋に楽しんでるだけだよ」
「そうですか。……ところで」
断定の言葉を口にされギルシュエブはこれ以上探るのは無理だと考え、話題を変えることにした
なにしろアルハムと自分では年季が違う。この男の腹を探ることが出来るものなど極僅かの神だけなのだから
「…アルハム。あなたなんですか?その姿。子供の姿なんかして、恐らくクルシスはいつものあなたの姿の方が好みですよ?」
「いいじゃん☆ぴちぴちでっ。それに僕はクルシスのためにあのくーるびゅーてぃふぉーな姿な訳じゃないし。」
「……覚えたての私の世界での言葉を使わなくて結構……。…いや、あなたの世界でもありますか?」
それについてもギルシュエブは話を始めそうになったが下らないと切り捨て。本題を……この気まぐれで何を考えているのかよく分からない食えない男によって異世界へおとされた少年
の事を思い浮かべた
いや
神にとって異世界だとかそういう概念はないに等しいのだけれど
「まぁ。精々頑張りなさい。」
様々なことを考えながらギルシュエブが出した言葉は不幸ともいえる少年に差し出されたもので、温かいようで冷たいようで放り出すようで見捨てない
そんなものだった
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