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官兵衛は、半兵衛の病の重さを知らずに同行することを素直に喜んでいる。
『今回の調略がまとまれば状況が好転します』
官兵衛が言うと、
「民も喜ぶでしょう」
半兵衛は眼前の民を冷静沈着な眼差しで見ながら爽やかに言う。
「我々の軍略の最終目的は民を苦しめないことです。
これは易しいようで実に難しい。
信長公が専業武士を作ってから戦中に彼らの姿が見えなくなりました」
官兵衛は聞く
『もしかして半兵衛殿は、信長公の天下布武を否定するのですか?』
「その通りです。
どれ程の人をあやめても、その先にあるのは希望ではなく、信長公が、絶対君主となる世の中。
恐怖政治で皆が幸せになれるとは思えない」
半兵衛の真意に官兵衛は驚きを隠せない。
『困りました信長公の野望に賛同して、天下布武を実現することで、自らの夢をつかもうとしている。
私には耳がいたい話です』
官兵衛は、唇を噛み締めた。
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