277人が本棚に入れています
本棚に追加
村重は、
「信長が、一度疑いを持った者を許すことは、有るまい」
また官兵衛に会えば、命を懸けて村重を説得し、己がそれを断ることができないことが分かっていた。
ゆえに官兵衛は今土牢にいる。
『わしは、後悔は、していない
ただ黙っていることができなかった』
そこには『天才軍師』としての姿は、無かった。
官兵衛は、半兵衛によく指摘されていた。
「出過ぎたことを控えよ!
そうすれば、軍師として大成するであろう」
『わしは、出過ぎたことを抑えることができなんだ。
ゆえにここに居る。
わしは、まだまだ甘いのか?』
半兵衛の透き通るような白く美しい顔立ちに、遥か先を見通す眼光、沈着冷静な姿が頭に浮かぶ。
「戦国で生き抜くすべを身につけよ!」
半兵衛の教えが、聞こえた気がした。
『信長は、いずれ有岡城を攻めるのは明らか。
なれば、それまで耐えて見せる』
しかし土牢のじめじめとした劣悪な環境が官兵衛の心と体を蝕んでいった。
足が悪くなり歩行困難となる。
目も霞みまわりもよくみえない。
ろくな食料も与えられず栄養不足となり衰弱が激しい。
最初のコメントを投稿しよう!