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光はわずか15歳で7歳年上の官兵衛のもとに嫁いだ。
官兵衛は祝言の後姫路城の寝所で光と二人きりになったとき、光を眩しそうに見つめていた。
「ふつつか者ですがよろしくお願い致します」
光が緊張しながらも透き通る声で挨拶する。
官兵衛は、
『こちらこそよろしく頼む』
雄弁家の姿が陰を潜め仏頂面で返す。
光は22歳の官兵衛にとって可愛らしい純情可憐な少女であった。
光にとって官兵衛は明るく元気な頼りがいのある武骨な大人の男であった。
官兵衛は、
『今日は疲れたであろう俺も緊張して疲れた今夜はゆっくり休むとしよう』
官兵衛は横になる。
『光も隣で休め』
こくりと頷き隣に横になる。
夫が横にいるそれだけで胸がドキドキしている。
官兵衛は静かに言った。
『光話しをして良いか?』
「はい」光は短く答える。
『俺はこの姫路城に生まれ育った。
知っての通り父、職隆はそちの養父政職様の家老であった。
本日より父は隠居して俺が家督を継ぎこの城は俺が預かり家老職も引き継いだ。
政職様は野心のないお方ゆえ、現状に満足しておられる。
しかし俺は違う。
天下の情勢は動いている。 俺には夢がある。
何かわかるか?』
「さあ何でしょう?
わかりません。
教えてくださいませ」
『俺は天下人になりたい』
「天下人にございますか?」
光は驚いて官兵衛の顔をまじまじと見る。
「冗談なのか!本気なのか?
どうやら本気みたい」
光の心の声がつぶやく。
(本気ならなおさらわけがわからない
養父や父が賛成するはずがない。
えらい人に嫁いでしまった)
『家中で俺は、なんと呼ばれていると思う?』
官兵衛は、構わず話し続けている。
『目薬屋の息子だ!』
「???何でですか」
光はさらに驚いて聞き返す。
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