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この時半兵衛は、これが最期の役目であると覚悟を決めた。
決断すると行動は早かった。
秀吉は、心に燻る怒りと恐怖を側近にぶつける。
「半兵衛は、わしに盾突いた。
わしの座を狙っている」
あまり聞き慣れない半兵衛への批判はすぐに半兵衛の耳に入る。
半兵衛は秀吉には会わずに急ぎ陣を出る。
長浜城に行き秀吉の妻おねに、
「菩提山城にて始末をつけまする」
と伝え松寿丸を引き取り、菩提山城に匿う。
幼い松寿丸には、
「そなたの父は約束を破ることは決してしない。
信義を重んじる人物である。
主の為友の為に自分の命をかけて説得に向かったのだ。
しかし信長公は裏切ったと考えそなたをあやめるように命令した。
疑心暗鬼に陥っているのだ。
やがて官兵衛殿は救出されるに違いない。
その時まで我はそなたを匿う。
そなたも、つらいだろうが、それまで父を信じて待っているのだ!」
と優しく言った。
そこには軍師ではなく子を思う親としての姿があった。
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