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半兵衛は、
「この菩提山城を我が家と思い、
我を父と思い、
あこを母と思い、
重門を弟と思い、
父の無事を祈り待っているのだ」
半兵衛の静かで強く優しい言葉に松寿丸は、泣き出した。
半兵衛の妻あこが、松寿丸を抱き寄せる。
あこの目にも涙が光っている。
半兵衛は秀吉に、
「松寿丸を始末しました」
と使者を出した。
秀吉はすぐさま信長に報告する。
信長は、半兵衛の予測通り、その命令すら忘れていた。
半兵衛は肺病が進み、自分がもうあまり長く生きれないことを悟り、官兵衛の嫡男松寿丸を守り抜くことが最後の役目であると考えている。
官兵衛との約束を守る為、友に全てを託す為に、文字通り命懸けで松寿丸を守る。
妻のあこに我が子同様に預かるようにと言い渡す。
また万が一、官兵衛が戻らない場合は、名を偽り実の息子として育てるようにとも話していた。
半兵衛の、生命力は、最早つきようとしていた。
しばらく菩提山城に療養をかねて留まっていた。
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