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この人は心の中をさらけ出し、全てを話してくれた。
そのことに嘘偽りはない。
信頼できる。
それならば私も心の内全てを話そう。
「貴方。私もお話があります」
『聞こう!』
官兵衛がこちらを向き光の美しい黒い瞳を見つめる。
「私は父と養父からあなたを監視して、謀叛を企てるようなことがあれば知らせるようにと、密命を受けて嫁ぎました。
しかしあなたの嘘偽りなきお話を聞いて私も全てを話しました」
光の目には大粒の涙が溢れ出していた。
官兵衛は慌てて肩を抱き、
『そのようなことはわかっていた。
そなたが悪いわけではない。
泣くなそなたに悲しい思いはさせない。
俺は義父を裏切ることはない。
約束するよ。
だから泣かないでくれ』
官兵衛はおろおろして光の涙を拭っている。
そのしぐさが可笑しくて光は泣き止み笑い出す。
『よかった泣き止んでくれた。
光は子供のようだな』
と言って官兵衛は、豪快に笑った。
乱世において義と利、多数の者が利を選択する中で官兵衛はその外見言動により誤解されやすいが義を選ぶ人物であった。
しかしそのことを理解するのは、心を許したごく一部の人間だけであった。
外見、雰囲気が人に疑念を抱かせ、警戒させた。
表面と内実の印象の差は生涯続く...。
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