白い神

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「にいにい。どうしてきはおうちにかえらないの? ずうっとあそこにたっててさむくないの?」  雪子は白いぼうしをかぶった林を指差してこう言いました。 「木はね、ああやってずうっと同じ所で家族を待ってるんだよ」 「かぞく?」 「うん。ほうら見てごらん。あそこに何がいるかな」  ぼくは林の入り口にある木を指差しました。ながーい耳。雪にも負けない白い毛皮。あの動物が木の根元からこちらを見ています。 「うさぎだー!」  雪子は大はしゃぎでうさぎに近づこうとしました。ぼくは雪子の手をそっとつかんでそれを止めます。 「いきなり近づくとびっくりするよ。まずはここから呼んでごらん」 「うん。わかった」  雪子は両手を口に当ててむねいっぱいに空気を吸います。 「よーい! よーい! うさぎよーい!」  おかさんがあんでくれたもも色手袋も雪子を応えんしているみたいです。 「よーい! よーい! うさぎよーい!」  雪子はいっしょけんめいうさぎを呼びました。でも耳の長いうさぎにはうるさかったのでしょうか、うさぎは木の向こう側にかくれてしまいました。
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