白い神

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「うさぎさんいっちゃった」  雪子の声も、つめたい雪にみーんなとけて、辺りはしいんと静かになります。 「うさぎさんさむいからお家から出たくないって」 「おうち?」 「うん。あそこにある木はね、うさぎさんや鳥さんのお家なんだよ。でもお家がかってに動いたらこまるでしょ? 雪子もお家がなくなってたらこまるよね?」 「ゆきここまる……」  雪子はちょっと考えて、それからぽつりと言いました。 「だからあそこにある木はみーんな同じ所に立ってるんだよ」 「えらいねー。きはすごいねー」  雪子は目をかがやかせて林の方を見つめていました。 「さむくなってきたから帰ろうか」 「うん。にいにいといっしょにおうちかえる」  ぼくは雪子の手を引いてお家の方へ歩きます。雪子はそっとふり向いて、林の方へ手をふりました。  キュッキュッ。  ギュッギュッ。  キックキックキック。 「にいにい。ゆきこたちのおうちはおててをあわせてるみたいだね」 「そうだよ。お空の白い神さまに毎年雪をふらせてねっておねがいしてるんだよ」 「じゃあゆきこもおねがいする」  雪はしんしんつもります。雪子が両手を合わせておねがいしたからきっと毎年ふるでしょう。 「よーい。よーい」 「よーい。よーい」  おとさんとおかさんがお家の前で呼んでいます。ぼくと雪子は大きな声で言いました。 「よーい。よーい」 「よーい。よーい」
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