凶弾

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 電話には母が出た、すぐに母が手招きをした。母の元へ着くと受話器を向けられた。 「お友達から、沢木さんっていう人」  母から受話器を受け取り、右耳に添える。うろたえた様な沢木の声が聞こえてきた。 「お、折原か……テレビ見たかテレビ!」 「ああ見た、正直言葉を失っている。なんで岡野がこんな事を……。あいつ虫すら殺す事の出来ない臆病者なのに」  岡野は昔から気が弱い奴だった。僕は中学校の頃からずっと同じクラスなのだが、まともに喋った事がない。オタク的な所があり、休み時間には教室の隅でライトノベルばかりを読んでいた記憶がある。理科の蛙の解剖実験で失神し、一週間学校に来なかった時期もある。臆病者で根暗な岡野が殺人なんて本当に出来るのだろうか? 「そういえばあいつ、一週間前から妙な言葉呟いていなかったか?」 「妙な言葉?」 「ああ、俺あいつの一つ前の席なんだが、授業中ずっと、奴がくる奴がくるって、気味わるかったぜ」
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