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「それにしても可愛い猫だね」
「あ、ダメです!」
ココを撫でようと伸ばした手をコノハの制止でピタと止める。
「ココは人見知りなので、知らない人だと噛み千切っちゃうんです…」
「…噛み千切る?」
ココを見ると、つい先程まで可愛かった猫が、剣山のように鋭い牙がズラリと並ぶ口を大きく開けていた。まるで獲物がかかるのを待つかの様に。僕は咄嗟に手を引っ込める。
「ココの歯は鉄でも噛み砕いてしまうので、指なんてもう骨ごと…あ、で、でも気にしないで下さい! 私がココに言えばお二人にも懐くと思いますから!」
コノハは僕とレンの若干恐怖に染まった表情をどう誤解したのか、必死にフォローしながら、口を開けたままのココを近づけてくる。その瞬間、サッと飛び退き、
「あ、ありがとう! でも気にしてないから大丈夫だよ! ね、レン!」
「そうそう! きっと仲良くなれるからさ!」
必死に拒絶した。
「そ、そうですよね! お二人とも優しいんですねっ」
コノハが満面の笑みでそう言うと、ココを肩の上に乗せる。それを見て安堵の溜息をつく僕とレン。
「ねえ、ただの猫だと思ったけどあれって…」
「ああ、モンスターだよな」
姿形はどう見ても猫だが、先程見せた鋭い牙はどう見ても猫とはかけ離れたものだった。しかし、モンスターが人に懐く話なんて聞いた事がない。コノハの様子からしてもココがモンスターなどとは心にも思っていないようだ。
「まあ、深く追求するのも野暮だ。知らない振りしてようぜ」
コノハを気遣いそう言うレンに僕も同意の意思を示す。
その後も互いに自己紹介や世間話などをしていると、やがてブリーフィングルームの扉が開き、一組の男女が現れた。
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