第一章

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僕は無意識のうちに唾を呑み込んでいた。そう入団はまだスタート地点に過ぎない。これから、危険な遺跡探索を何度もこなし、夢である一級騎士を目指すのだ。レンも同じ事を考えているのか、あまり見せる事がない真剣な表情をしている。 「…なんて柄にもない事を言ってしまいましたが、私も総隊長と同じ様に君たち一人一人の活躍を期待していますよ」 最後は柔らかく微笑み締めくくるカイン。副隊長と違い、隊長はとても良い人そうだ。 「はい!」 カインの期待に応えられるようにと大きな声でそう言うと、ジョシュアから声が小さいと怒られた。 その日の第十二小隊最初のブリーフィングは顔合わせで終わり、明日は朝八時に修練場集合となった。 日が沈んできた頃、僕とレンは騎士団の食堂で夕食をとっていた。 「にしても、あの副隊長どうにかなんねえかな」 レンはブリーフィングでジョシュアに何度も返事が小さいと言われたことに対してブツブツと文句を漏らしている。レンのへーい、ほーいなどと間の抜けた返事が原因なのは分かり切っている事なのだが。僕は苦笑いを浮かべながらミートソーススパゲティを口に運んだ。 「黙ってりゃあ、綺麗なお姉さんなのにな。勿体ねえ」 「お前に口説かれても嬉しかないね」 その声にレンがバッと振り向くと、ジョシュアがミートソーススパゲティが載ったお盆を肩に担ぎながら立っていた。レンがゲッと顔をしかめる。 「口説いてねえし、なんで三級騎士の食堂に二級騎士様がいらっしゃるんだよ」 「お前のその言葉使いどうにかなんねえのか。うちはここのスパゲティが好きなんだよ。じゃなきゃこんなとこ来るか」 騎士団では級によって、寮や食堂が分かれている。確かにこのミートソーススパゲティは美味しい。二級騎士の食堂の味は知らないが、わざわざ三級の食堂に来るのも頷ける。と、ジョシュアがレンを睨みながら、その隣の席に座った。 「なんで隣座るんだよ! あっち行け!」 「お前先輩に対してなんだその態度! お前があっち行け!」 「まあまあ」 ミートソーススパゲティを頬張りながら、制止の声を上げるが、二人は尚もフォーク片手にギャーギャー言い合い続けていた。
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