第一章

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アルフはそこでやっとジョシュアが二級騎士という事に気づいたのか、ジョシュアの纏う正装に目を見開く。 「おいおい、騎士同士の私闘はご法度じゃねえのか」 「うちは良いんだよ」 「なんだそりゃ」 ジョシュアがアルフの喉元から手を離すと、アルフはゴホゴホと咳き込んだ。 「ちっ、覚えていろ! 貴様ら!」 そしてそう言い捨てて、食堂を去って行く。さすがに二級騎士と揉めるわけにはいかないと考えたのか。周りにいた取り巻きも慌てて後を追う。 「なんだあいつは。本当にき●たまついてんのか」 ジョシュアは機嫌が悪そうにドカッと席に座ると、残っていたミートソーススパゲティを一気にかきこんだ。 「俺はお前にきん●まがついてない事に疑問を感じる」 刹那、ガンッと食堂中に大きな音が響き渡り、頭を抱え込むレン。 「だからお前はその口の利き方をなんとかしろ」 ジョシュアは変型したお盆をカウンターに返すと一足先に食堂を後にした。 「今のはレンが悪いよ」 僕は笑いながら、空になった食器類を片付けようと席を立つと、コノハもそれに習うように立ち上がる。肩にいたココがお腹いっぱいになったのか満足そうにニャーオと鳴いた。 「そういえばさ」 三級騎士の寮には二人用の部屋が幾つもあり、その内の一つが僕とレンに割り振られている。部屋の中にある二段ベッドの下段で横たわる僕に上段にいるレンが話し掛けてくる。 窓の外はすでに真っ暗になっていて、部屋の中に明かりはなく、窓から差し込む月明かりだけが、ぼんやりと照らしていた。 「シュウが探してるっていう人、いたか?」 「うーん、いなかったよ」 「そっか…でもまだ初日だし、会ってない人も沢山いるだろうからな。きっと見つかるって」 僕は左頬にある傷跡を指でなぞる。あれから十年。ずっと探しているが、未だ見つからない命の恩人。忘れもしない炎のように赤い髪。騎士団の人である事は知っていたので、入団すれば直ぐに会えると思っていたが、人生そう上手くはいかない。 「うん、そうだね」 傷跡から指を離すと、寝やすい体勢へと寝返りを打ち、目を閉じた。
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