第零章

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まるで夜の様な静けさ、暗がり。しかし、上を見ても満天に輝く星空は無い。当然、月なんてものもある訳がなく、辺りを灯しているのはゆらゆらと揺れる燭台の炎。 そこは壁や床、天井が全て幾重にも積み上げられた石でできた通路。時折壁に彫られた絵の様なものがあり、ここが人の手によって作られたものだと推測できる。しかし、誰が何のために作ったのかは様々な専門家が調査したが、謎に包まれたまま。 そこに一人の少年がいた。 ふらふらとおぼつかない足取りで歩く少年。この不気味な場所に似つかわしくない程、幼い。 「レン、どこに行っちゃったの?」 今にも泣き出しそうな震えた声。しかし、返事は返ってくるはずもなく、少年の声が少しこだました後、再び不気味な程の沈黙が訪れる。その状態がより一層少年を不安にさせる。 コツン。と、歩いている少年の爪先に小石が当たった。少年はその感触に驚くも、直ぐに自分が小石を蹴ったことに気付き、僅かに安堵する。 コツッコツッ。小石は思ったよりも遠くに転がっていったようだ。暗がりによって目視はできないが、音から安易に想像できる。 しかし、静寂の中で小石が転がるその音は、一度は安堵した少年を再び不安にさせた。少年が緊張により、生唾を飲み込む。 しかし、何も起きることはなく、少年は肩の力をふっと抜くと、再び歩き出すべく、右足を上げた。 「グルルル…」 不意に何か唸るような声がし、少年の右足は不自然に宙でピタリと止まる。 「な、なに…?」 その唸り声は先程小石が転がっていった前方から聞こえ、少年は右足をそろりと床に下ろすと、前方へと目を凝らす。 「…ひっ!」 不意に少年が息を呑んだ。前方を凝らした少年の目に映ったのは、宙に浮かぶ赤い二つの点。まだ、距離があるものの、それはゆっくりと近付いているような気がした。 近付いてくるにつれ、赤い二つの点だけではなく、輪郭のようなものが映し出される。少年はその距離になって初めて気づく。それが赤い眼だという事に。
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