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人々が地下遺跡探索を開始してから十八年後ーー
閉鎖された世界のほぼ中央に位置する大きな城。そこは国王が住まうわけではなく、領主がいるわけでもない。モンスターの出現によって乱れた世界の秩序を守ろうと、人々が集まり創った【蒼天の騎士団】の本部。
その功績は突如現れた大穴の封鎖から始まり、モンスターの殲滅、そして巨大地下遺跡の探索などと幅広く、輝かしいものばかり。
それ故に人々は騎士団を英雄視し、大抵の子供たちは成人である十八歳になったら、騎士団に加入することを夢見る。
それは僕も例外ではなかった。
そして今、【蒼天の騎士団】本部では夢が叶う事となった僕を含む新米騎士の入団式が行なわれようとしている。
本部大広間に規則正しく整列する二十名の若者たち。黒地に青いラインが入った騎士団の正装を身に纏い、緊張の為か皆表情が固く見える。そして視線は大広間の正面の壁に垂らされている青い布に刺繍された、交差した剣と両翼のマークーー騎士団の紋章に向けられていた。新米騎士が纏う正装の胸元にもそれと同じ紋章が刺繍されている。
と、その布の前に銀色の鎧と青いマントを身に纏った、一人の厳格そうな男が現れた。自然と視線が一斉にその男へと注がれる。
「この世界は我々が生まれる遥か前から存在し、先祖代々平和に暮らして来た」
男が語り始める。
「しかし、皆も知っての通り、数十年前突如大穴が出現し、モンスターが現れた。大穴は一度は塞がれたものの、その不安や恐怖は今尚人々に根強く残ってしまっている」
さらに男が続ける。
「我々騎士団はその人々へ植え付けられてしまった不安や恐怖を拭う為、また遥か昔から夢見た外側へ向かう為、数年前に発見された地下遺跡の謎を一刻も早く解き明かさねばならない!」
男はそこで一度言葉を区切り、新米騎士一人一人の顔を見渡した。
「君たちは人々から選ばれた、いわば希望だ! 君たち一人一人の活躍を期待する!」
男はそう締めくくると、右の拳を胸にある紋章にあてる。新米騎士たちも同じ様に敬礼した。
男の名はクルーディ。蒼天の騎士団、総隊長だ。
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