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依織はプールに、限りなく弛緩した状態で浮かんでいる。
四肢と長い髪はそれぞれが別々の方角へ伸びている。
分裂するのではないかと思ってしまうくらいに。
ここは依織が普段いる部屋。
プールは浴槽であり、ベッドでもある。
そこに横たわる依織は思うことがある。
この翼であの島に行けないだろうか。
ここに嫌々来て、そして体の中身を機械にして、厳しい訓練の果てに手に入れた黄金の翼。
しかしそれをもってしても、たどり着くことはできない。
翼の稼働時間が足りないのだ。
いったいなぜこの力を得たのか。
重力の鎖を断ち切り、自由で美しい空を舞い、名も知れぬ島に行くためではなかったのか。
翼を得ることができるからと聞いたから、ここまで耐えることができた。
でもいつまでも耐えられるわけではない。
押さえつけられたバネは反発する。
もう限界が近い。
忠邦、蓮、私を鳥かごから連れ出して。
薄暗い部屋で叶わぬ願いを想った。
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