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忠邦と蓮とは出会うべくして出会った。
そう思っている。
よく晴れた夏の日の浜辺に、導かれるように行き、そして出会った。
なぜ行ったか、そこで何をしたかったのかわからない。
言うなれば、神の啓示に従ったとでもいうべきか。
理由など意味はない。
2人に会ったかどうかが問題だ。
忠邦は初対面にも関わらず依織に積極的に話しかけた。
蓮は人見知りのようで、視線を合わすことなく遠い水平線を見ていた。
夜間に甲板で見張りをするように。
「僕は戸沢忠邦」
「……高坂蓮」
明るい忠邦と対照的に、蓮は名乗った。
「君の名前は?」
「藤堂依織」
「いおりちゃんっていうのか」
いったん間を置いた。
「一緒に遊ぼうよ」
蓮は右手を差出し、優しく強い眼差しで依織を見つめた。
それは急かすことなく、何時間、何日、何週間でも答えを待つかのような目をしている。
しかし依織は待たせなかった。
「うん、一緒にあそぼ!」
依織は蓮の手を取って、共に駈け出した。
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