<忠邦>深い青と本物の白

3/6
前へ
/52ページ
次へ
沈黙。 それは決して重苦しいものではない。 「どうした? 何か言ってみろよ」 「いや、蓮からそう言われてちょっと驚いてしまった」 「まったく心外だな。俺だって言うときは言わせてもらうぞ」 「ふん」と鼻を鳴らして海を見た。 暗くてよく見えないが、何の変哲もない普通の海だ。 ただ月の引力に従って潮が引き、そして押し寄せる。 星の運行も変わらない。 一定のリズムを刻んで、決められた動きを繰り返す。 これは戦争が始まっても変わらないもの。 「ありがとな」 「えっ」 唐突にお礼を言われて、蓮は驚いた。 「突然どうした?」 「励ましてくれたお礼だよ。もう弱音なんて吐かない」 忠邦の目は力強く輝いている。 「そうか」 蓮はそれだけ言った。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加