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忠邦は鴉の鳴き声で目を覚ました。
今日は大学に行かなくていい。
それなら工場に行って、彩雲の修復に取り掛かるのだが、今日は違う。
それは昨日のことだ。
機械工学の講義が終わり、僕は鞄にノートとペンケースを入れて、製作所に行こうとした。
「ねえ忠邦、この後空いてる?」
突然隣の席の女の子に話しかけられた。
少女は葛西鈴音<かさいすずね>、僕の数少ない女友達だ。
黒髪のサイドポニーテールで、髪質の良さそうなサラサラの髪。
二重まぶたで、瞳は新緑のような活力に満ちていて、目尻が少し垂れていて愛らしい。
「うちに来ない?」
鈴音がこちらの目を覗き込むように見つめている。
内面を見透かしているような目をしていて、口角は上向きで微笑を浮かべている。
鈴音の家は僕と同じ町にあり、喫茶店を営んでいる。
彼女は喫茶店に来ないかと暗に言っているのだ。
誘いを断ろうかと思ったが、彩雲の修復作業を始めてから付き合いが悪くなった気がするので、翌日なら行けると言った。
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