<忠邦>あの島に行きたい

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「あのね、海の向こうにはね、島があるの」 茶髪の少女は腕を目いっぱい伸ばして、海の広さを表している。 「それぐらい知ってるよ。大陸のことでしょ」 隣にいる癖毛の少年がつまらなさそうに言う。 「そうじゃないの!」 少女は風船のように頬を膨らませた。 そして、ポケットから折りたたまれた紙を取り出した。 それをアスファルトに広げた。 それはこの国と周辺海域が描かれた地図のようだ。 「ここ」 少女が地図の1点を指で指し示した。 そこは不自然に何もない海域。 島々が避けているようなそこは、水を表す青色で塗りつぶされている。 「ここにはね、だれも知らない島があるの。わたしね、いつかここに行ってみたいんだ」 熱っぽく語る少女を冷ますかのように、空から冷たい雪が降ってきた。 遠い海で戦いが始まったこの日、僕たちの住む沿岸の町では初雪が降った。
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