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教授が飛行機のエンジンについて説明している。
しかし、今の蓮にはあまり頭に入らない。
蓮は窓の外を見ている。
誘惑するように揺れるカーテンの向こう側に広がるのは、青い空を風に流されて、遠いどこかに行く真っ白な雲だ。
そんな青と白のキャンパスに、雲以外の白が飛び込んだ。
遠く、ただ遠くを目指す紙飛行機だ。
紙飛行機はキャンパスにその姿を馴染ませている。
そこにあることが当然のように。
しかし蓮は何かに馴染んでいるだろうか。
表層上の友人関係。
決定に自分の意志が存在しない現実。
それでも飛行機作りのことに関しては、自分から作りたいと思って賛同した。
本当は飛行機なんて作りたくない。
そう思っている。
作ることは依織に近づくことにつながる。
今の蓮にとって最も近づきたくない、会いたくない人物だ。
忠邦には言っていないが、依織がどこかへ連れさられていくところを見ていた。
雪深い日の逢魔が時、軍用車に乗せられているところを孤児院の前で見た。
助けようと思ったが、足がすくんでしまって動けなかった。
依織を車に乗せている人は、体つきのいい軍人だ。
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