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あの日僕が何気なくあげた頭痛薬は、どうやら彼女の体と相性が悪かったらしい。 まるで惚れ薬だった。 飲んだ直後に視界に入った人を、愛して愛して愛してしまう。 そんなふざけた副作用が出てしまったみたいで。 『大好きよ』 最初は三週間。 三週間でその副作用は消えた。 僕と付き合っていた記憶もなくなって、普通の幼なじみに戻って。 『愛してる』 意図的に飲ませた二回目、三回目。 四回目で効果は二週間になった。 『ずっと一緒に居ようね?』 今回が九回目だ。 副作用は少しずつ薄まって、僕が彼女の人生を自分勝手に荒らせるのも、後少しだけ。 『……ごめん、やっぱり付き合えない』 何度付き合っても、何度告白しても、いつも答えは同じだった。 残った一錠の頭痛薬。 最後の半日を握り締めて、僕は。
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