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「俺はまだ」
「私は……」
「……は?」
「それ、近いけどさ!!」
超一流大学じゃん!!
「お前なら行けるって言われたから」
頑張ってみようかなって……
目当ての学部もあるし
と、ふにゃり、と気の抜けた笑顔で笑われて、何だか心に穴が
開きそうな気分。
「とうとうあんた達」
一緒にいれなくなるのね
「……そーだね」
初めてだね、こんな事
と、寂しそうな表情で応える煌に変に期待してしまう。
「でも、まだ受かるか分かんないし」
頑張るよ、少なくとも受かれば実家住まいだし
と、微笑んで帰路につく。
何となく分かってたんだ。
煌はもう、俺と同じ道を歩けないことも。
でも、いざ現実を突きつけられると辛い。
応援してやりたいのに。
結局俺はローカル線に揺られて二時間の大学に進学して下宿、愛は
留学、煌は目当ての大学に合格した。
「皆離れ離れだね」
「また会えるよね?」
そう言って一度も会わずに三ヶ月が過ぎた頃、一言だけ俺にメールを
送ってきた煌。
「彼氏、できた」
たったそれだけ。
でもその一言が俺を貫いて、涙を溢れさせた。
それからは一切連絡もなく、更に三ヶ月が過ぎた。
俺は結局その辺の大学生となんら変わらない、不規則極まりない
生活を送った。
変な女が周りを彷徨いて色目使ってくるけど、何かキモい。
煌がいい。
誰を見るにも、 煌と比べては、ここが違うあれが違うと否定して
煌を探してる。
学校、バイト、酒を繰り返して。
その日も酒を飲むつもりで冷蔵庫からチューハイを出してリビングに
向かう途中。
滅多に鳴らないチャイムが鳴った。
「誰だよ、こんな時間に」
日付が変わって間もない時間。
生憎チャイムを鳴らすような、品のよい友達はいない。
「どちら様ー?」
「……ジェジュン……」
微かにドア越しに聞こえた声に息をのむ。
「もしかして……」
煌……?
そっとドアを開ければ、少し力の入った如何にもデートしてました
って感じの可愛い雰囲気を纏った煌が泣いていた。
「ジェジュン……助けて」
そう言って、俺の胸に飛び込んでくる煌を慌てて抱き止めてドアを
閉める。
そのままリビングに連れて行き、ソファーに座らせて
チューハイを片付けて、代わりに紅茶をいれる。
「いきなりごめんね?」
ソファーの影から顔を覗かせて幾分落ち着いた声で謝れば
それっきり黙ってしまう。
「いいけどさ」
どうしたんだよ
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