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「林檎がいい? それとも梨がいいかしら?」
姉はぼくから取り上げたナイフを使って丁寧に、丁寧に林檎を剥いていく。
「はい、あーんして?」
熟れた林檎の一切れがぼくの口へと収まった。姉も一口頬張る。
「毒林檎じゃなくて残念かしら?」
姉は軽くぼくの心を読んだようなことを言うと、ゆっくりと手を動かして、二つ目の林檎を剥く作業に取りかかった。
今、ぼくのナイフからは甘い林檎の香りがする。姉の血のにおいではなく。
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