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「ありがとう、キャロ」
微笑む子供たち。
その子供を見て微笑む、緋色の子。
去り行く子供に手を振り見送ると、子供と目線を合わす為に屈んでいた体勢のままボクを振り返る。
何故だろう、心が酷く痛んで霧が掛かっているんだ。
「アラン」
身体を痺れさせる様な甘いテノールボイス。
フッと細められた、髪とは対照的なキラキラ輝く碧眼。
とても幸せそう。
「子供、て可愛いくね?」
「そう?」
可愛い?
ボクはそう思わない。だって、あの子たちはボクのキャロを目の前で奪うから…。
否定する様な声で答えたボクにキャロは仕方がないなぁ、という顔をした。
「アラ~ン?嫉妬はよくねぇさな」
「して、ない」
「うっそだぁ~。アラン嘘下手クソ」
ニコリ、と口元を綺麗な三日月形に歪めてキャロはボクを煽る。
なんでそんなに幸せそうにキミは笑うの?いつもいつも…ボクには真似出来ない。
「ボクは…」
「アラン、女の子が『ボク』はダメッ!」
メッ!と開きかけた唇にキャロの長くて細い指が当てられる。
それだけで、ボクのチキンハートは悲鳴をあげるんだから、始末におえない。
ボクはフイッと顔を背けると、キャロの手を払う。
イテッ!と大袈裟に声をあげたけど、気にしない。だって、キャロは笑ってるから。
「馬鹿キャロ」
「馬鹿はないなぁ、お兄さんに向かって」
苦笑を漏らしながらも、その奥には優しさが見て伺えた。
なんで、この人はボクにこんなにも甘いのだろう?
その優しさが、ボクをどんどんキミの虜にしていくのに気付いてる?
いや、気付いてないよね。
キミは鈍感だから。
ボクは浅い溜め息を吐く。
「溜め息を吐きたいのはコッチ」
「知らない」
「なになに、アランちゃん反抗期?お兄ちゃん悲しいなぁ~」
「キャロはボクのお兄ちゃんじゃない」
「あ、またボクって言った!」
ダメだろうッ!とまるで妹やら弟を叱るようにボクを叱るキャロ。
それが、その態度がどれだけボクを不安にさせるか分かってよ。
「キャロの馬鹿…」
「アラン……」
じわり、と視界が滲む。
大好きな、大好きなボクのキャロ。
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