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鬼と人間の動乱―――日本人と外人ということか?
そう山中が考えたときには既にきびだんごの次の言葉が耳に迫っていた。
『憎しみは連鎖し、悲しみを生む。
被害を被ったのは人間だけではなく鬼も同じで、自分達も加害者であるという意識を持たねば、あるいは相手を許容する心を持たねば、ことは解決しない。
そう語るに十分な結末を。』
天井を見つめ、暫し沈黙のきびだんご。
山中にはその姿が悔恨の様子に見え、それが訳もなく彼の心を掻き回した。
(なんだ………この感覚。)
『しかし。
……語れなかった、私は。
完全勝利に沸いた子供たちの高揚を見た瞬間、
私は、語るべき続きを見失ってしまった。』
きびだんごがパチン、と指をならし、スクリーンは再び闇を写し出す。
「語らなかったと………?
その、伝えるべき続きを…………」
山中の問いに、きびだんごはコクリと頷く。
『子供たちの弾けるような喜びようを見て、
気づいてしまった。
……………私自身も飢えていたのだ。
子供たちの笑顔に………』
その瞬間、
全天型のスクリーンが息を吹き返し、
針のように銃器のつきだした武装に、戦艦、戦車、戦闘機を従えた
『現代の』
桃太郎が、その姿を現した。
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