本来在るべきモモタロウ

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犠牲者の形はそれぞれだった。 《桃太郎陛下》を信じて戦地で犬死にしたもの、 焚書政策に反対して闇に葬り去られたもの、 桃太郎の真実を告げて始末されたもの、 そして、竹川のような者…………。 洗脳され尽くした子供たちに、親たる大人が何も言えない状況が出来上がると、 あとは誰も、どうしようもなくなっていた。 ――君たちの夢は? その問いに、今の子供たちは100人が100人こう言うだろう。 「桃太郎陛下のために死ぬことです。」 「時代が時代だったんだろう……… 猿がイージス艦で雉がF18、犬がM4シャーマンなんてバカげた話が、子供らのその純真無垢な心を完全に占拠していた。 そんな子供たちが今、大人になって国の中心にいるのだからたちが悪い。 奴等が教育を担うようになって、さらに加速したんだろう。 超人桃太郎についていけば大丈夫………なんてことを言って死んでったやつは、俺の友達にゴマンといる。 全部、超人的に誇大された桃太郎のせいだ。」 だから今日―――そいつを殺しに来た。 超人的に誇大された桃太郎を。 本来の桃太郎というものを証明してやるだけで、簡単に抹殺することができる。 だから俺は、命を懸けてここへ――――
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