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「さて、そろそろチビたちの様子を見に行くか」
ネージュは机の脇に置いた鍵型の杖を手に取ると、脇に挟んで立ち上がる。
今では杖がなければ満足に歩くことはできない。
あの戦いで負った傷。焼かれた左足が戻ることはなかった。
だが、そんなことをネージュはこれっぽちも気にしてはいない。彼女はそのような道を歩いているからだ。
「あ、ネージュさん。お早うございます」
廊下に出ると、布団を大量に抱えた少女マシロに出会った。
旅をしていた彼女と出会ったのは約一年前のこと。なんとお互い『霧の里』の出であり、その縁で今はこうして自分を手伝ってもらっている。
「シロ子、これから布団を干しにいくの?」
「うん、そうだよ。こんなにいい天気だしね。霧の里も今日は晴れかなぁ」
あれから、霧の里は厳密な意味で霧の里ではなくなった。里を覆っていた結界の霧が消えたのだ。
それを機に、里は今までのあり方を改めた。マシロが里を出ることができたのも、そうした理由からであった。
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