過去の楔

9/41
前へ
/291ページ
次へ
彼女は生体兵器,G-157というナンバーネームをつけられている。技術発展,能力向上という名目で篠村財閥がバックアップしていた研究組織は関係ない子を無理矢理被検体にしたのだ。そのせいで唯李の身体は成長しなくなり投薬をしないと命を繋ぐことができなくなってしまった。 「過去の記憶も無くし……偽りの身体で生きている…くそっ,児嶋さん,どうして人はそうまでして技術の進歩が必要なんですか」 「とぉ,いきなり何を?」 「今の技術でも満足しない…人は一体どこまでやれば,進歩すれば気がすむんだ」 「そら……はじめは十分だ満足だとしても次第にそれに飽きてしまう。趣味と一緒だろ」 手慣れた手付きでキーボードを打ち込んでいく児嶋さん。 画面は無数のフォルダファイルが表示されていて次々と消去していった。 「俺は満足だな。大日本帝国日本侵攻前の紛争の減少や環境対策も,今の技術あっての代物だからな……」
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加