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男は駆ける。
人が歩くことによって出来たこの一本道を、無表情で。
グルルルッ…
周りの民家が少なくなったころ
突然木々の茂みから聞こえた獣の唸り声が、彼の足を止めた。
彼はため息をつく。
「来てたのか」
なにかがいるであろう茂みに、彼は声をかける。
すると、しゃがれた低い声が返ってきた。
『悪い気配だ…。森のモンスター達が怯えておる』
声の主の鼻息と思われる音が、辺りに響いた。
「ああ。急ぐぞ」
口をきゅっと真一文字に結ぶと、男は再び駆け出し、村の外れの家を目指す。
暗闇が生み出す異常なまでの静けさが、彼の焦りをいっそう掻きたててゆく。
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