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ニールは、ぽかーんと口を開けたまま固まった。
それもそのはず。空に人が住めるなんて考えたことはないのだから。
「む、無理だよぉ…僕、飛べないもん!」
それに、歩くのも疲れちゃった。そう言って、ニールはその場にしゃがみこみ、眠気に任せてユラユラ。
「ああ、私も飛べない。だからコイツで行くのさ」
グルルルルッ…
暗い森に獣の唸り声。
ニールは、ひゃ!と言ってテオラドにしがみついた。
『また面倒なものを拾ってきよったか…』
「そう言うなよ、アグムト」
テオラドは、首をすくめて苦笑した。
木の影からのっそりと姿を表したのは、ドラゴンだった。
黒くて周りと同化しているため、全貌はわからない。
だがしかし、紅蓮に光る鋭い眼光。
20メートルはあろうほどの巨大な体。
前足だけ見えた限りでは、無駄のない筋肉。
首から尾にかけてゴツゴツと尖った突起物は、ドラゴンの象徴。
突然現れたその存在に、ニールは体を震わせた。
「紹介しよう。私の相棒、アグムトだ」
『人間の子を見るのは300年ぶりじゃな…。テオラドがまだ餓鬼のころ』
「え、あの…初めまして…。僕、ニールっていいます」
緊張しながらも、ニールはペコリと頭を下げた。
それに答えるように、アグムトも目を細めた。
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