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『ほう…ドラゴンライダーの証を入れたのか…。何日目じゃ?』
「まだ数時間しか経ってない」
ニールに変わって、テオラドがそう答えると、アグムトは目を細めて首をニールに近づけた。
獣の臭いではない、不思議な臭いのする鼻息がニールの顔にかかった。
アグムトが鼻で息をするたびに、ニールの髪の毛が乱れる。
『あぁ…たしかに。臭いが変わっているな…。だが、まだ完全ではない』
「そのうち変わるだろう。まずは、帰ろう」
「わぁ!」
テオラドはニールを抱えると、慣れた様子でアグムトに飛び乗った。
「空の上は寒い。私のローブの中に入りなさい」
テオラドがまるで親鳥が卵を暖めるかのように、ニールを自分のローブで包み込んだ。
「すごい!全然寒くないや!」
「ドラゴンの羽毛で出来たローブだ。君ものちのち持つことになるだろう」
アグムトの背中は、想像していたより痛くはなかった。
そっと背中に耳を当てれば、ドクンドクンとアグムトの心音が聞こえる。
ローブの暖かさとアグムトの心音に安心したニールは、うとうとと夢の世界へ引きずられる。
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