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テオラドの家だと言われた樹木は、あまりに巨大だった。
巨大で、美しく、神秘的。
通常の切り株の何十倍もある太い幹。
ドラゴンすらも木陰で休んでいるように見える、力強く伸びた枝葉。
内部から溢れ出す淡く優しい光は、夜光虫が発する光だろう。
夜光虫は夜になると全身をうっすら光らせ、集団で飛び回る虫だ。
樹木の周りで繁殖し、人々の心を和ませる風景の立役者となる。
森全体がそんな青く淡い光に包まれており、幻想的な風景を産み出していたのだ。
「まだ話足りないが…明日もある。今日は休もう」
『ああ、そうした方が良い…』
テオラドはニールを抱えると、アグムトの翼の付け根から前足、地面。とまるでステップを踏むように華麗に降りた。
そして、樹木に備え付けられた扉を開く。
「さ、ここが私たちの家だ」
室内の光によって、ニールの寝顔がはっきりと見えた。
涙によって濡れた睫毛と涙の跡。
「…ア、ム…」
「ああ…必ず助けよう。だから、せめて今は良い夢を」
そう言ってテオラドは、柔らかい羽毛で出来たキングサイズのベットにニールを寝かせる。
そして大剣を床に置き、ローブを取ると自らも布団の中へ入る。
小さく寝息をたてるニールの髪をそっと撫でていると、いつしかテオラドも夢の中へと入り込んでいった…。
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