02.

2/23
前へ
/122ページ
次へ
「こりぁぁあ!このいたずら小僧どもめぇ!!落書きを消さんかぁぁあ!」 小さな村に怒声が響き渡る。 ああ、またか。 と誰かが呟いた。 村の大通りであるこの道は、多くの人が行き交っている。 怒声を聞いた人々は苦笑いをし、まもなく人混みを掻き分けてこちらに向かってくるであろう存在に目を向けた。 「消してほしけりゃこッこまでおいでー!」 「こっこまでおいでー!」 身長は130cmほど。 少し高めで、澄んだよく似た声。 ぱっちりとした二重に赤みのある頬。二人とも同じ位置にそばかすがあり、よく似た容姿。 違いと言えば、髪の色くらいだろうか。 店主を挑発しながら駆けてくる2人は、村一番のいたずら兄弟だ。 「やあ、黒髪のアムに赤毛のニール。今回はなんのいたずらをしたんだい?」 走り回る2人に、宿屋のオヤジが声をかける。 「菓子屋の商品棚に落書きしたんだ!」 黒髪のアムが答える。 いたずらといっても生活に影響が出るほど大きなことでもなく、村の人々は怒りつつ呆れつつも2人を皆が愛していた。 「アムったら上手なんだ!」 「おや、なにがだい?」 「犬の鳴き真似だよ!あそこの店主、犬が嫌いだろう? 驚いて腰を抜かしたすきに僕が落書きしたんだ!」 兄の勇姿をキラキラとした目で語る赤毛のニールは、どこかでコケたのか髪に砂がついている。 「まーた、ばあちゃんに叱られるぞ」 そういったのは、料亭の女将。 その言葉に2人は固まる。 「ば…ばあちゃなんか怖くねぇ!なぁ、ニール」 「う、うん! 僕、ばあちゃなんか怖くないぞ!」 「はいはい、ほら。ばあちゃんに怒られるか、謝るか。どっちにすんだい?」 「ごめんなさーい…」 「ごめんなさい…」 そう言われて二人は、きまり悪そうに女将に謝った。 「素直に謝るくらいならするんじゃないよ。まったく、少しは落ち着きな。お前らは今日で…」 その言葉を聞いて、 アムとニールが顔を見合わせる。 そして、2人同時に口を開いた。 「うん、僕たち、今日で10の年だ!!」
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

698人が本棚に入れています
本棚に追加