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入り口のドアを開けると、目の前にはアグムトが欠伸をしながら地面に寝そべっていた。
昨日は暗くてわからなかったけど、アグムトは本当に真っ黒だ。
全身にゴツゴツしたトゲがあって、鱗が黒光りしてる。
しなやかに鍛えられた四肢は、よく見ると沢山傷が付いている。
一番深い傷は、尻尾の真ん中らへんの所かな。
抉れたような傷が付いてる。
これが、2000年生きたドラゴンなのだと思うと、なんだか鳥肌がたった。
「ちなみに、グランフィーネに人間が使うような車や戦車などの移動手段は存在しない。
移動は全て、ドラゴンだ」
僕は、小さい頃ばあちゃに連れられて王都に行った時に見た、大きな戦車や屋根のないゴトゴト音をならしながら走る四輪車を思い浮かべた。
「へえ!じゃあ、空でドラゴン同士がぶつかっちゃったりしないの?」
「そんなヘマをするのは、お調子者のドラゴンか下手くそなライダーだけさ」
僕は空を見上げたが、木の葉や枝に邪魔をされあまり空を見ることは出来なかった。
「飛んでみれば分かる」
「うわっ!」
テオラドは、僕を米俵のように脇に抱えると、アグムトの背中によじ登った。
背中に腰を下ろしたとき、やっぱり不思議に思ったんだ。
アグムトの体の表面は、とても固い鱗がびっしり生えている。
なのに、なんで痛くないのだろうか?
まるで心を読んだかのようにテオラドが言う。
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