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「何故痛みを感じないのか?そう思ってるだろう?
…ああ、そうだ!
下に剣を忘れてきてしまった。
すまんが、取ってきてくれないか?」
話が一転した不自然な頼みごとに、僕は戸惑った。
「えっ、僕、こんな高さから降りれな…」
言葉を言い終える前に、テオラドはアグムトの背中から地面に向けて、僕を突き落とす。
さっきまで目の前にあったテオラドの顔が、ゆっくりと遠ざかる。
ゆっくり流れる周りの風景。
全てがスローモーション。
ん?スローモーション?
本来なら既に地面に落ちているはずの僕の体は、未だに空中に浮いていた。
仰向けの体制から、足を下に向ける余裕がある。
ゆっくり近づいてくる地面。
そっと爪先が地面に着き、僕は難なく着地した。
高いところから飛び降りたとき、足から全身に伝わるあのズキンっとした独特の痛みも感じない。
『ほう…うまく着地出来たみたいじゃな』
「上出来だ」
え?あれ?なんで?
混乱しつつも、視界の端にテオラドの大剣が落ちているのが見えた。
「こんなの持てないよ!」
上にいるテオラドに聞こえるように、僕は大声を張り上げた。
「出来るか出来ないかは、試してみてからいいなさい」
「うー…」
渋々、大剣の柄を両手で握りしめ、ぐっと力を入れて上に引っ張った。
結果は………
「も、持てないよぉ!」
ピクリともしない大剣。
諦めて僕は手を離した。
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