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2人が妄想話に耽っていると、太陽が沈み始め、村が赤く染まり始める。
大通りの人だかりは、いつの間にかずいぶん静かになっていた。
「さあ、2人とも。もうお帰り」
「今日は家じゃなくて、長老の家に行くんだよ!ばあちゃんも先にいってるはずだ」
女将が2人の服装を正しながらそういった。
それを聞いて、アムがげんなりと首を垂らす。
「長老の家、遠いんだよね…」
「ねぇ、アム。お化けとか出ないよね?」
「大丈夫だよ、ニール。ファントムはまだ寝てる」
2人は手を繋ぎ、よくあった歩調で駆け出す。
そんな2人を、女将とオヤジはいつまでも見つめていた。
「魔法使いにドラゴンライダー。オレも子供のころ夢見たもんだ」
「楽しみだね。明日の朝にはお前さんの弟子になってるかもしれないね」
女将の言葉に、オヤジは肩をすくめた。
「よしてくれ。オレの気苦労が増えるよ」
「あははっ!本音はそうでもないだろう?
あの子達はとても器用な子たちだ。何になろうとうまくやれるさ」
「なれるといいな、魔法使いとドラゴンライダー」
「馬鹿言いなさんな。魔法使いは100年。ドラゴンライダーに至っては300年も出てないんだ」
日がすっかり落ち、辺りが暗くなったころ、料亭に客が入り始める。
「お、今日も頑張りますか」
女将は、妊婦のように膨らんだお腹をポンッと叩いて気合いをいれる。
「オレんとこもそろそろ客が来るだろう」
そういいながら、2人は自分の仕事場に帰っていった。
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